楽天への転職が気になっている。年収を上げたいし、大きなサービスの開発にも関わってみたい。英語を仕事で使えたら、将来の選択肢も広がるかもしれない。
でも、「社内公用語は英語」「TOEIC800点」と聞いたところで、手が止まる。
技術の話なら日本語で説明できる。英文のドキュメントも、時間をかければ読める。では、英語で会議をして、その場で意見を求められたらどうか。急に心もとなくなる人はいると思う。
僕が実際に楽天で働いて感じたのは、英語が流暢でなくても仕事はできるということだ。
それに、下手でも英語を使う度胸はついたし、読む・書くスピードも上がった。大変だったけれど、得られたものも確かにある。
ただ、英語公用語化には、単なる語学力の問題では片づけられない、楽天という会社の考え方も表れている気がした。
英語を使うことと、英語を使えと求める会社で働くことは、似ているようで違う。
そんな楽天で、自分は働きたいか。 英語公用語化を、元社員として考えてみたい。
この記事の体験談は、2020〜2021年ごろ、僕が関わった職場の話です。当時の役職は課長でした。現在の採用条件については、2026年10月15日に確認した公式情報を別途示しています。
楽天は、なぜ社員に英語を求めるのか
英語公用語化で、楽天が目指していること
楽天の英語公用語化は、会議や資料など、社内の仕事で使う言語を英語にしていく取り組みだ。
楽天の公式説明では、国内外の社員の情報共有、世界の情報を素早くつかむこと、世界中から優秀な人材を集めることが目的として挙げられている。
つまり、楽天が目指しているのは、国籍や勤務地に関係なく、誰もが英語でコミュニケーションできる会社なのだろう。
ただ、会社の目指す姿が分かることと、自分がその環境で働けるかは、また別の話だ。転職を考える側としては、まず入口の条件が気になる。
TOEIC800点は、仕事で使う英語とは別のハードル
「楽天は800点がないと入れないの?」。ここは、自分が応募する求人を確認してほしい。実際の募集には、点数だけでなく、取得する時期や雇用形態についての記載もある。
例えば、公式の「楽天証券株式会社(出向)IT本部:AI駆動エンジニア」の求人には、英語要件としてTOEIC800点以上を挙げつつ、スコア未保有の場合は入社後に取得する旨が記されている。
一方、ビジネス職の「楽天市場:SEOスペシャリスト」の求人では、800点以上または同等の資格等を条件としながら、600点以上なら契約社員として入社でき、入社後に800点を目指すとしている。この条件を、エンジニアの求人にもそのまま当てはめることはできない。
出典:AI駆動エンジニアの公式求人/SEOスペシャリストの公式求人(2026年10月15日確認)
必要な点数、いつまでに取るのか、どの雇用形態になるのか。契約社員で入るなら、正社員になる条件は何か。そこは応募先ごとに確かめたい。
ちなみに、僕が所属していた楽天市場の部署では、入社後2年以内にTOEIC800点を取れなければ、給与が10%減額されるという説明を受けた。
ただ、TOEIC800点を取ったからといって、英語での会議が急に楽になるわけではない。英会話機能が自動インストールされるなら、僕も欲しかった。
英語公用語化には、楽天の社風も表れている
楽天が英語を公用語にする理由は分かる。世界中の人と一緒に働くためには、共通の言語が必要だ。
でも、実際に働いて感じたのは、それだけではないということだ。
自分の仕事で英語がどれだけ必要かにかかわらず、会社が決めた目標には社員も取り組まなければならない。
つまり、TOEIC800点は、単なる英語力の基準ではなく、楽天という会社のやり方を受け入れられるかを問う、一種の「踏み絵」にもなっているように僕には感じられた。
それが良いか悪いかは、人によって違うだろう。ただ、楽天への転職を考えるなら、英語ができるかどうかだけでなく、こういう会社の考え方が自分に合うかも大切だと思う。
では、実際に英語で働くとは、どういうことなのか。僕の経験を紹介したい。
TOEIC800点の先にある仕事――僕の職場ではどうだったか
一日中英語ではない。でも、英語でやる仕事はある
「英語公用語」と聞くと、朝から晩まで日本語を一言も使えない職場を想像するかもしれない。
安心してほしい。実際にはそんなことはない。
もちろん、部署によって英語を使う割合はかなり違うと思う。例えば、店舗向けの営業を担当するコンサルタントなどは、普段の仕事で英語を使う機会は少ないのではないだろうか。
では、エンジニアはどうなのか。
僕が楽天市場で働いていたときの話を紹介したい。
まず、毎週月曜朝8時からの全社朝会(ASAKAI)は英語。全社員参加必須だったが、聞いているだけなので、英語そのものの負担はほとんどなかった。
一方、チームの日々の朝会は日本語だった。おそらく日本語を話さないメンバーがいなかったからだろう。このあたりはチームによって違うと思う。
普段の会議には、「日本人だけなら日本語。外国籍のメンバーが一人でもいれば英語」という、国籍でざっくり分けた暗黙のルールがあった。
ただ、これも実際にはかなり柔軟だった。
日本人ばかりの会議に外国籍のメンバーが一人だけ参加していても、その人が日本語を話せる場合は「日本語でもOKですよ」となり、そのまま日本語で進むことも多かった。
考えてみれば、全員が不慣れな英語で苦労するより、日本語で議論した方が話が早いこともある。
上司との1on1も、日本人同士なら基本的に日本語。僕はマネージャーだったので人事関係の会議も多かったが、こちらも参加者のほとんどが日本人で、基本的には日本語だった。
一方、公式なレポートや資料は基本的に英語。部会のような大きな会議も英語だった。
昔から残っている日本語の資料もあったが、英語化は進められていた。
つまり、英語公用語だからといって、すべての仕事が英語になるわけではない。
僕の感覚では、書類は基本的に英語、会議は2割くらいが英語だった。
だから、楽天への転職を考えるなら、「英語を使う会社か」だけでなく、「自分が入る部署では、どんな仕事に、どのくらい英語を使うのか」まで確認した方がいいと思う。
TOEICの点数と、英語の流暢さは別の話
もう一つ、入社前のイメージと違うかもしれないのが、実際に耳にする英語だ。
僕の周りでは、日本人社員の多くがカタカナ英語で話していた。全社朝会での役員のスピーチも、思いっきりカタカナ英語で、少し拍子抜けしたことがある。
考えてみれば、それも当然だ。日本人の多くは英語を後から学んでいるし、中国や韓国、インドなど、さまざまな国の人が働いている。英語の発音だって、人それぞれだ。
お互いに違う英語で、なんとか意思疎通している。それが僕の見た楽天だった。
仕事で英語を使うと聞くと、ついテレビで見るような流暢な英語を想像する。でも、実際にはそんな人ばかりではない。
英語を話すことに尻込みしている人には、これを伝えたい。
ネイティブのように話せなくても、仕事はできる。大切なのは、きれいな英語を話すことより、相手に伝えることだ。
少なくとも、僕は楽天でそう感じるようになった。
一番大変だったのは、英語で質問に答えること
では、カタカナ英語でいいなら気楽だったのか。
残念ながら、そういうわけでもない。
僕は毎週の部会で、英語の進捗報告をしていた。
大変だったのは、発表そのものより、その後の質疑応答だ。偉い人から、ときには意地悪に感じる質問が飛んでくる。
ただでさえ、その場で答えを考えるのは大変だ。それをさらに英語にして返さなければならない。
日本語でも答えに困るような質問に、英語で答えろというのだから、たまったものではない。
これは本当に、毎週めちゃくちゃ疲れた。
それでも、度胸と読み書きの速さは身についた
一方で、英語を使って働いたことで、得たものもあった。
まず、下手でも英語を使う度胸がついた。
文法や発音を気にする気持ちはある。でも、仕事では伝えなければいけないことがある。多少不格好でも、とにかく口を開く。そんなことを繰り返すうちに、英語を話すことへの抵抗は少なくなった。
それから、読む・書くスピードは圧倒的に上がった。レポートは全部英語。嫌でも日々英語を書くことになる。たぶん、使える単語も増えたと思う。
英語が流暢になったわけではない。でも、英語を仕事で使うことには、以前ほど身構えなくなった。
TOEICの点数とは別のところで感じられた、僕なりの成長だった。
そんな楽天で、自分は働きたいか
英語のハードルを越えて、自分は何を得たいのか
ここで、最初に楽天が気になった理由へ戻ってみたい。
英語を仕事で使いたいのなら、僕の経験は一つの参考になる。僕自身、英語が流暢になったわけではないが、英語を使う度胸や読み書きの速さは身についた。
ほかのエンジニア組織も似たような感じだったと思う。ただ、今は僕がいた頃より英語で話す機会が増えているかもしれない。
将来、外資系企業で働きたいなら、楽天はすごくいい環境だと思う。
英語でレポートを書き、会議で報告し、その場で質問に答える。そうした経験を実際の仕事を通じて積めるからだ。
しかも、僕の周りでは英語が母国語ではない人たちが、それぞれの英語で仕事をしていた。
いきなり流暢な英語が飛び交う環境に飛び込むより、英語で働くことへの心理的なハードルは低いと思う。
年収を上げたい、という理由もあるだろう。僕の感覚では、楽天の給与水準は国内IT企業の中でも比較的高い方だと思う。
ただし、英語で働く負担も含めて、実際に提示される仕事内容と条件に納得できるかは考えたい。
楽天エンジニアの年収やグレード、賞与については、こちらの記事に詳しくまとめている。実際にオファーをもらったときの参考にしてほしい。
英語そのものが目的でなくてもいい。やりたい開発があり、その仕事をするために英語を使う。その順番でもいいと思う。
英語だけでなく、会社の求め方にも納得できるか
英語を仕事で使えることと、会社が求めるTOEIC800点を取ることは、また別の話だ。
英語を学ぶきっかけになると前向きに考える人もいれば、自分の専門の仕事に加えて、そこまで求めるのかと感じる人もいるだろう。
実際、800点に届かない場合は契約社員としての採用になる求人もある。また、僕がいた部署では、入社後2年以内に800点を取れなければ給与が10%減ると説明された。
英語が必要なのは分かる。でも、そこまでやるのか。
このストロングスタイルに、楽天という会社のカルチャーが表れている気がする。
こういう会社のやり方が自分に合うかどうかは、入社前に考えておきたい。
楽天で得たいものはあるか
ここまで、TOEIC800点を入り口に、楽天の英語公用語化について書いてきた。
でも、楽天で働く魅力は英語だけではない。大きなサービスの開発や待遇面など、楽天だからこそ得られるものもある。
一方で、会社が決めた高い目標に社員も全力で取り組む、楽天のストロングスタイル。これを成長のチャンスと感じる人もいるだろう。
別に全部が自分に合っている必要はないと思う。そんな会社、そもそも滅多にない。
自分が得たいものと、引き受けなければならない負担。そのバランスが、自分のキャリアや成長にとってプラスになるかどうか。
そこが大切なんじゃないだろうか。
もちろん、雇用形態や給与に関わる条件は、好き嫌いだけでは済まない。そこは事前に確認して、納得して選んでほしい。
そのうえで、「楽天で働いてみたい」と思えたなら、いい選択肢になると思う。僕が楽天への転職に向けて準備したことも参考にしてほしい。
逆に、楽天のストロングスタイルが気になった人には、僕が楽天を辞めた理由も読んでみてほしい。
楽天は、自分にとって働きたい会社なのか。
最後はそこだと思う。

